第2話2

環境に変化が起き出したのは交番勤務に移動して一年過ぎた梅雨の時期であった。朝から雨が降りレインコートを着ながら巡回をしている時である。
組事務所前に初めて見る高級な黒塗りの車が1台停車していた。その車の前にはスーツ姿の厳つい男が傘をさして立ち、事務所のほうを見つめている。
福岡巡査官は車のナンバーを控え、本署の上司へ報告をいれ、少し離れたところから組事務所の様子を伺った。
先程は気が付かなかったが停まっている車の中に、高校生くらいであろう女の子の姿が確認できた。福岡はその女の子に見覚えがあった、女の子は車のフロントガラスの先の方に姿を隠す福岡巡査官を見ているようにも思えた。
福岡巡査官が様子を伺い初めて10分くらいたった頃、事務所の中より男が一人出て車の前にいる男を呼び寄せていた。
それと同時に事務所より白髪の背の高い男と入院中であった組長の石川が笑いながら出てきたのであった。
白髪の男はそのまま停車していた車の後ろの席女の子の隣に乗り込み、運転席に厳つい男、助手席に最初に事務所から出てきた男、計四人で車は事務所を離れようとしていた。
車はゆっくりと福岡の前を通り過ぎて行く。通り過ぎる時に車の中の女の子を確認する事ができた、女の子は福岡に向かい「助けて」と口を動かしているように思えた。
石川が事務所に戻ったのを確認すると、福岡も事務所へ向かい歩を進めていた。雨は先程より強くレインコートを叩いていた。